Kiramune Presents READING LIVE「密室の中の亡霊 幻視探偵」小ネタ

キャラクターのネーミング

READING LIVE2018「カラーズ」の登場人物は、そのタイトルの通り苗字に色が含まれている。

柳スグル
ユウイチ
金崎シンイチ
井ゴロウ
部イワオ
シラサワ

翌年(初演)もREADING LIVE2019「密室の中の亡霊 幻視探偵」にも、命名に規則性がある。

三条虚:数字の「0(霊⇒零)」
浅野宗:頭文字「あ(さの)」+数字の「1」
鹿島正:頭文字「か(しま)」+数字の「2(次)」
笹木郎:頭文字「さ(さき)」+数字の「3」
田辺清:頭文字「た(なべ)」
中村平助:頭文字「な(かむら)」

※苗字の頭文字があ弾(母音が「あ」の五十音順)の4番目が田辺清(4=シ=死?…というよりは1~3に次ぐ4番目の容疑者という匂わせ)
※清(きよし)と博(ひろし、三条虚霊の長男)は3文字とも子音が一致(同一人物説の緩やかな公定)
※名前の頭文字(「き」と「ひ」)は、い弾(母音が「い」の五十音順)で4つ離れている(き→し→ち→に→ひ)

ロウソクの火が消えるトリック

脚本の相沢沙呼先生は「奇術愛好家」を自称することからも分かるように、マジックを嗜んでいる。
作品内で三条虚霊が用いた「ロウソクの火を自動的に消す」トリックを摂理が「マジックみたい」と評したのもこのため。

「幻視探偵」の能力

作中で「(超能力のようなものかという問いに対し)違います」と食い気味に答えたように、暁玄十郎の「幻視」というのはあくまで「関係者の証言や物証から事件の実像に近付ける能力が異常に高い」だけで、オカルティックな超能力ではない、というのが語られている。
犯人を含む登場人物の思考や行動原理を推測し、何十、何百通りの再現(シミュレート)する中で最適化されたより真実らしい結果を「幻視」と呼んでいる。
(ただし、摂理曰く「(幻視能力の一環で)相手の思考を理解しているつもりでいるが、相手の気持ちに立ててはいない」)
そんな、犯人が仕掛ける「超常現象」、「霊能力」に見える事象にも、必ず科学的に証明可能なトリックが存在する、という言ってみれば「どんと来い、超常現象」な暁玄十郎の基本思考があるにも関わらず、目の前のいる斗真摂理の自称・亡霊を説明することができなくて、"幻覚"と言い聞かせているアンバランスさが作品の魅力の一つである。
脚本・相沢沙呼の代表作「medium 霊媒探偵城塚翡翠」における、「霊媒」をストーリー前半の推進に使用しつつ、結末では…という流れにも似ている。

神谷浩史演じる暁玄十郎を観るとき、「文豪ストレイドッグス」の江戸川乱歩(CV.神谷浩史)を思い起こさずにはいられない。
主たる登場人物のほとんどが異能力者(作中での超能力者)で占められる中、江戸川乱歩は「超推理」の異能力者を自称しつもも、(基本的には)異能力を持たない一般人である(異能力を彷彿とさせる推理力は、本人の人並外れて優秀な頭脳で事件を解決に導いていた)。

斗真摂理のことを、三条透には"視えていない"、観客には"視えている"
斗真摂理が"視えている"メタ視点

暁「心霊と魔術の立証だ」
摂理「心霊と魔術を…どうやって?」
暁「観客に幽霊を視せてしまえばいいのだから」

三条虚霊が3人の弟子を観客(証言者)にして、心霊(三条雪の亡霊)と魔術(交霊の儀式)を立証するためにトリックを仕掛ける。
そしてこの朗読劇自体も、"信頼できない語り手"暁玄十郎により「観客に幽霊="斗真摂理"を視せている」というメタ視点。

劇中の時間を少し遡り…

暁「君のせいだぞ斗真摂理!」
摂理「僕のせいだって!?」
暁「そうだ!君のせいで私は『幽霊が存在するかもしれない』と当たり前のように当たり前のように受け入れてしまっていた!」

観客には、摂理が

「こんな事件、普段の私ならものの数秒で解けていたはずだ」は大袈裟ではない

暁「こんな事件、普段の私ならものの数秒で解けていたはずだ」

暁本来の尊大な物言いを表す台詞に見えるが、実際、本調子の暁玄十郎であればもっと早く真実にたどり着けたと思わせる描写がある。

透「私には、心霊や魔術といったものを信じる気持ちは、どうにも理解できません」
透「けれど、人間がそれにすがりたくなってしまう状況というのは、解らないでもないのです」
透「それはきっと、人の心の弱さから来るのでしょう」
透「私も、大切な人を失ったら、その人の幽霊に逢いたくなるのかもしれない」
暁「幽霊ですか。そんなものの存在は全くもって非論理的です」
透「やはり、暁先生は信じていらっしゃらない?」

作中の時系列
1909年頃 明治42年 三条虚霊が心霊研究に傾倒する。 明治末の"千里眼事件"前後
1919年頃 大正8年 黒書館殺人事件で三条虚霊が殺される。 2019年からおよそ100年前
1926年頃 (昭和元年) 田辺清が手記を発表。 アクロイド殺し」(1926年発表)より後年
2009年 (平成21年) 斗真摂理が冤罪で捕まりそうになるところを暁玄十郎に助けられる。 「10年前に~」
摂理、暁の助手になる。 「10年だ。今年で10年になる。」
2018年 (平成30年) 斗真摂理が凶弾に倒れる(?)。暁玄十郎が肩を負傷し療養に入る。 "1年後、令和元年"
2019年 (令和元年) 三条透が暁探偵事務所を訪れ、暁玄十郎に調査を依頼。 (同上)
笹嘉神島(離島)で殺人事件が発生、暁玄十郎に調査が依頼される。 『密室の中の亡霊』エンディング